合同会社設立の流れ(外国人向け)
外国人が日本で合同会社を設立する場合の手続きを、9つのステップに分けて整理しました。会社設立に関するネット上の情報は、登録免許税の金額や経営管理ビザの基準など、制度改正前の古い情報のまま掲載されていたり、株式会社の情報がそのまま誤って転用されていたりすることがあります。本記事では、そうした点を現行制度にあわせて訂正したうえでご紹介します。
社員(出資者)の居住地によって、必要な期間と書類が変わります
代表社員を含む社員(出資者)全員が日本に居住しているかどうかで、書類のやり取りの方法と設立までの期間が変わります。
社員全員が日本居住の場合
国際郵便で書類をやり取りする必要がないため、比較的短期間で手続きを進められます。合同会社は公証役場での定款認証が不要なため、株式会社よりさらに短縮できるケースもあります。
- 日本の印鑑証明書(市区町村発行)2通
- 個人の実印
- これから作る会社の実印
社員の中に海外居住者がいる場合
国際郵便でのやり取りが発生するため、配送日数を見込んだスケジュールが必要です。
- 中国居住者:本国発行の印鑑公証書+翻訳文
- 台湾居住者:台湾の印鑑証明書+翻訳文
- 韓国居住者:印鑑証明書、または本人署名事実確認書+翻訳文(韓国では署名による証明制度も利用できます)
- その他の国籍:本国発行のサイン証明書+翻訳文
- 日本居住の社員がいる場合:国籍を問わず日本の印鑑証明書
- これから作る会社の実印
合同会社設立までの9ステップ
案件によってはこの他にも手続きが必要になる場合があります。個別の状況に応じた進め方は、事前にご相談ください。
合同会社の基本事項を決める
商号(会社名)、本店所在地、事業目的、社員(出資者)構成、出資額、業務執行社員・代表社員を誰にするかなどを決定します。株式会社の「株主」「取締役」にあたる立場を、合同会社では「社員」「業務執行社員」と呼びます。
「定款」を作成する
合同会社の基本原則となる「定款」を作成します。商号・本店所在地・事業目的・資本金額・社員構成・決算期など、会社の重要事項を定めた書類です。
定款を電子定款として作成する(収入印紙の節約)
合同会社の定款は公証役場での認証こそ不要ですが、紙で作成した場合は印紙税法上の課税文書として4万円の収入印紙が必要になる点は株式会社と同じです。当事務所では行政書士電子定款に対応しており、ワードで作成した定款をPDF化し電子署名を施すことで、この4万円が不要になります。
会社の資本金を振り込む
社員(出資者)個人の口座に資本金を振り込みます。振込先は日本国内の銀行口座である必要があります(海外銀行の日本支店の口座でも可)。通帳のコピーを取り、「払込証明書」を作成します。株式会社と異なり公証役場での認証手続きを待つ必要がないため、定款完成後すぐに振込に進めるのが合同会社の特徴です。
法務局へ法人設立登記をする(会社設立)
設立登記に必要な書類一式(登記申請書、定款、払込証明書など)を準備し、法務局へ法人設立登記と会社代表印の登録を行います。登記申請日が会社の設立日となります。登記の際にかかる登録免許税は、資本金額の0.7%相当額、または6万円のいずれか高い方です。
税務署・都道府県・市区町村へ各種届出をする
「法人設立届出書」「給与支払事務所等の開設届出書」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」など、税務署や都道府県税事務所・市区町村役場に提出すべき届出を行います。これらの届出の控えは、経営管理ビザ申請時に添付書類として必要になります。
必要な許認可を取得する(該当する場合)
古物商許可、人材紹介業、旅行業、不動産業、建設業、飲食店営業許可、免税店許可など、許認可が必要な業種でビジネスを行う場合は、経営管理ビザの申請「前」に許認可を取得しておく必要があります。
経営管理ビザの申請(出入国在留管理局)
在留資格申請書、事業計画書、その他の証明書類を準備したうえで、出入国在留管理局へ経営管理ビザを申請します。
年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへの各種届出
常勤職員を雇用する場合など、法令に基づき必要な届出を行います。会社設立・ビザ取得後は、税務・労務管理を専門家と連携しながら進めていくことが、事業を安定的に継続するうえで重要になります。
社名決定の4つのルール
会社名を決める際には法律上のルールがあります。難しい内容ではありませんが、決めた後に変更が必要にならないよう、事前に確認しておきましょう。
社名に「合同会社」の文字を入れる
「合同会社」は社名の前でも後でもかまいません。「合同会社〇〇」でも「〇〇合同会社」でも、自由に決めることができます。
使える文字に制限がある
使用できるのは、漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字(大文字・小文字)・数字(0〜9)・一定の符号(& ‘ , - . ・)です。中国語の簡体字・繁体字や、ハングル文字は使用できません。
同一住所での同一商号は不可
同じ住所に同じ商号の会社を登記することはできません。本店所在地を決める際にあわせて確認しておくとよいでしょう。
他社の商標との類似に注意
法律上は登記できてしまう場合でも、既存の有名企業や商標と似た社名は、後にトラブルの原因になることがあります。事前に確認しておくと安心です。
定款に定める「事業目的」のポイント
定款に定めた事業目的は、会社の登記事項証明書にも記載されます。「具体的であること」「明確であること」「適法であること」が基本ルールです。
会社設立後すぐに行う事業を記載するのが基本ですが、将来的に行う予定がある事業についても、あらかじめ盛り込んでおくことができます。後から事業目的を追加・削除する場合は、法務局への登録免許税として3万円がかかります。許認可が必要なビジネスを行う場合は、事業目的にその旨をきちんと記載していないと、原則として許可を取得できません。たとえば中古自動車の輸出入を行いたい場合は、「古物営業法に基づく古物商」「中古自動車の買取、販売及び輸出入」のように、事業目的に明記しておく必要があります。
合同会社設立にかかる費用(最新の制度に基づく金額)
合同会社は株式会社と異なり定款認証が不要なため、法定費用を大きく抑えられるのが特徴です。ただし「登録免許税は一律6万円」という説明は正確ではありません。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 不要 | 合同会社は公証役場での定款認証が不要 |
| 収入印紙 | 4万円 | 紙の定款の場合のみ。電子定款の場合は不要 |
| 登録免許税(設立登記) | 6万円〜 | 6万円、または資本金額の0.7%相当額のいずれか高い方 |
※上記は合同会社設立にかかる法定の実費のみで、行政書士・司法書士等への報酬は別途かかります。市区町村の「特定創業支援等事業」の証明書を取得すると、登録免許税が半額(3万円〜)になる軽減制度もあります。
合同会社と株式会社、どちらを選ぶか
経営管理ビザの取得という観点では、株式会社・合同会社のどちらでも基本的な許可基準に違いはありません。一方で、コストや対外的な印象には次のような違いがあります。
| 合同会社 | 株式会社 | |
|---|---|---|
| 定款認証 | 不要 | 必要(手数料1.5万〜5万円) |
| 登録免許税(最低額) | 6万円 | 15万円 |
| 出資者と経営者の関係 | 原則一致(社員=経営者) | 分離可能(株主と取締役) |
| 意思決定 | 出資比率に関わらず柔軟に設計可能 | 原則、出資比率に応じた議決権 |
| 対外的な信用面 | 株式会社よりやや低く見られる場面もある | 一般的に高い |
| 将来の組織変更 | 株式会社への変更が可能 | — |
設立コストを抑えてスピーディーに始めたい場合は合同会社、将来的な出資受け入れや日本企業との取引における信用力を重視する場合は株式会社が向いています。近年はAmazonジャパン合同会社のように、大企業でも合同会社を採用するケースが増えており、合同会社であること自体が信用の障害になる場面は以前より少なくなっています。
合同会社設立のために作成する書類
業務執行社員が1名のみのケースと、複数名いるケースで、必要書類が一部異なります。
業務執行社員1名のケース
- 定款
- 払込証明書
- 登記申請書
- OCR用紙
- 印鑑届
業務執行社員複数名のケース
- 定款
- 払込証明書
- 業務執行社員の決議書
- 就任承諾書
- 登記申請書
- OCR用紙
- 印鑑届
設立後に必要となる主な届出
提出先ごとに、主に必要となる届出をまとめています。事業内容や従業員の有無によって必要な届出は異なります。
| 法人設立届出書 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 |
| 源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書 |
| 青色申告の承認申請書 |
| 棚卸資産の評価方法の届出書 |
| 事業開始等申告書 |
| 新規適用届 |
| 新規適用事業所現況届 |
| 被保険者資格取得届 |
| 健康保険被扶養者(異動)届 |
| 保険関係成立届 |
| 概算保険料申告書 |
| 会社謄本、従業員名簿、賃金台帳、出勤簿などの添付書類 |
| 適用事業所設置届 |
| 雇用保険被保険者資格取得届 |
| 労働保険関係成立届の控え(労働基準監督署の受付印付き)など添付書類 |


