日本拠点の4形態|設立・設置の流れ・メリット/デメリット・費用を徹底比較
外国人が日本で事業を始める際の代表的な4つの形態――株式会社・合同会社・日本支店・駐在員事務所について、設立(設置)の流れ、メリットとデメリット、そして費用を形態ごとに整理しました。経営管理ビザの取得を見据えた選び方まで、行政書士が解説します。
1まず知っておきたい:4つの進出形態の全体像
外国人・外国企業が日本に進出する形態は、大きく4つに分かれます。ここで重要なのは、厳密には「会社設立」にあたるのは株式会社と合同会社の2つだという点です。日本支店は本国法人の一部(別の法人格ではない)を日本に置くもの、駐在員事務所は登記も不要で営業活動ができない連絡拠点であり、いずれも「新しい会社を作る」わけではありません。
| 形態 | 法人格 | 登記 | 日本での営業活動 | 費用の目安(法定・電子定款) |
|---|---|---|---|---|
| 株式会社 | 独立した法人 | 必要 | 可能 | 約18〜25万円〜 |
| 合同会社 | 独立した法人 | 必要 | 可能 | 約6〜10万円〜 |
| 日本支店 | 本国法人の一部 | 必要 | 可能 | 登録免許税 9万円〜 |
| 駐在員事務所 | 本国法人の一部 | 不要 | 不可(連絡・調査のみ) | 登記費用なし |
※上記はいずれも法定費用の目安です。専門家(行政書士・司法書士等)への報酬、資本金、事務所賃料などは別途必要です。
2株式会社の設立
最も信用力が高い形態株式を発行して出資を集め、出資者(株主)と経営者を分離できる、日本で最も一般的で信用力の高い会社形態です。
- 基本事項の決定:商号・本店所在地・事業目的・資本金・役員構成・発起人などを決めます。
- 定款の作成:会社のルールとなる定款を作成します(電子定款なら印紙代4万円が不要)。
- 定款の認証:公証役場で公証人の認証を受けます(株式会社は認証が必要)。
- 資本金の払込み:発起人の口座に資本金を払い込み、払込証明書を作成します。
- 設立登記の申請:法務局へ設立登記を申請します(申請日が会社の成立日)。
- 設立後の各種届出:税務署・都道府県・市区町村・年金事務所等へ届出を行います。
メリット
- 社会的信用が高く、取引・融資・採用で有利
- 株式発行により外部からの資金調達がしやすい
- 出資者(株主)と経営者を分離できる
- 将来的な上場・事業拡大にも対応できる
デメリット
- 設立費用が高い(法定費用だけで最低約20万円〜)
- 決算公告の義務がある
- 役員に任期があり、改選のたびに登記費用が発生
- 合同会社に比べ運営ルールがやや厳格
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 1万5,000円〜5万円 | 資本金100万円未満で一定要件を満たすと1.5万円、通常は資本金に応じ3万〜5万円 |
| 定款の収入印紙 | 0円 | 電子定款の場合。紙の定款は4万円 |
| 登録免許税 | 15万円〜 | 資本金 × 0.7%(最低15万円) |
| 謄本・印鑑証明等 | 数千円程度 | 登記事項証明書・印鑑証明書など |
| 合計の目安 | 約18〜25万円〜 | +専門家報酬・資本金は別途 |
3合同会社の設立
低コスト・柔軟な運営出資者全員が有限責任社員となる会社形態で、設立費用が安く、運営が柔軟なのが特長です(AppleやAmazonの日本法人も合同会社です)。
- 基本事項の決定:商号・本店所在地・事業目的・資本金・社員(出資者)構成を決めます。
- 定款の作成:定款を作成します(電子定款なら印紙代4万円が不要)。公証人の認証は不要です。
- 資本金の払込み:代表社員の口座へ資本金を払い込みます。
- 設立登記の申請:法務局へ設立登記を申請します。
- 設立後の各種届出:税務署・自治体・年金事務所等へ届出を行います。
メリット
- 設立費用が安い(法定費用で約6〜10万円)
- 定款認証が不要で手続きがシンプル
- 決算公告の義務がない
- 利益配分や意思決定を柔軟に設計できる
デメリット
- 株式会社に比べ知名度・信用度がやや劣る
- 株式による資金調達・上場ができない
- 出資者=経営者(所有と経営が一致)
- 「代表社員」など呼称になじみが薄い場合がある
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 0円 | 合同会社は認証不要 |
| 定款の収入印紙 | 0円 | 電子定款の場合。紙の定款は4万円 |
| 登録免許税 | 6万円〜 | 資本金 × 0.7%(最低6万円) |
| 合計の目安 | 約6〜10万円〜 | +専門家報酬・資本金は別途 |
4日本支店の設置
本国法人の日本拠点すでに本国に会社がある場合に、その会社の一部として日本に営業拠点を置く形態です。独立した法人ではなく、本国法人が権利義務の主体となります。
- 日本における代表者の選定:日本に住所を有する代表者を1名以上定めます。
- 商号・目的の確認:日本での商号と事業目的の適格性を確認します。
- 本国書類の準備:本店存在証明書・代表者資格証明書など(宣誓供述書=Affidavit)を用意します。
- 宣誓供述書の認証:本国の公証人や日本の大使館・領事館で認証を受けます。
- 営業所設置の登記:法務局へ外国会社の営業所設置登記を申請します。
- 設置後の各種届出:税務署等へ届出を行います。
メリット
- 本国法人の実績・信用をそのまま活かせる
- 独立した資本金の払込みが不要
- 日本支店名義で口座開設・不動産賃貸が可能
- 営業活動(売上を伴う取引)ができる
デメリット
- 別法人ではなく、債務責任は本国法人が負う
- 本国の登記事項変更のたびに日本でも変更登記
- 閉鎖時に債権者保護手続など手間がかかる
- 経営管理ビザとの相性では子会社設立が選ばれやすい
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 9万円 | 営業所を設置する場合。代表者選任のみ(営業所を設置しない)場合は6万円 |
| 宣誓供述書の認証 | 数百〜数千円程度 | 大使館・領事館等での認証 |
| 本国書類の翻訳等 | 実費 | 外国語書類の日本語訳が必要 |
| 合計の目安 | 法定 約9万円〜 | +翻訳・認証実費・専門家報酬は別途 |
5駐在員事務所の設置
情報収集・連絡拠点市場調査や情報収集、連絡・広報などの準備的な活動を行うための拠点です。登記が不要で最も手軽に始められる一方、営業活動(売上を伴う取引)はできません。
- 事務所スペースの確保:オフィスを用意します(契約は本社または個人名義が一般的)。
- 活動範囲の確認:市場調査・情報収集・広告宣伝・物品購入など、営業に該当しない活動に限定されることを確認します。
- 登記は不要:法務局への登記手続きは不要です。すぐに活動を開始できます。
メリット
- 登記が不要で、設立費用がかからない
- 迅速・簡易にスタートできる
- 市場調査・情報収集・広報に適する
- 撤退(閉鎖)も容易
デメリット
- 営業活動・売上を伴う取引ができない
- 銀行口座・不動産契約は本社/個人名義になる
- 原則、経営管理ビザの基盤にはならない
- 本格的な事業には別形態への移行が必要
64形態の費用・特徴 比較表
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 | 日本支店 | 駐在員事務所 |
|---|---|---|---|---|
| 法人格 | 独立した法人 | 独立した法人 | 本国法人の一部 | 本国法人の一部 |
| 登記 | 必要 | 必要 | 必要 | 不要 |
| 定款認証 | 必要 | 不要 | ― | ― |
| 登録免許税 | 15万円〜 | 6万円〜 | 9万円(営業所設置) | なし |
| 法定費用の目安 | 約18〜25万円〜 | 約6〜10万円〜 | 約9万円〜 | ほぼ0円 |
| 営業活動 | 可能 | 可能 | 可能 | 不可 |
| 社会的信用 | 高い | 中〜高 | 本国法人に依存 | 低い |
| 経営管理ビザ | 適する | 適する | 可能な場合あり | 原則不可 |
※法定費用は電子定款・最低登録免許税を前提とした目安です。実際は資本金額・専門家報酬等により変動します。
7外国人が選ぶときのポイントと経営管理ビザ
外国人が日本で「経営者」として在留しながら事業を行う場合、経営管理ビザの取得が前提になります。この観点では、営業活動ができない駐在員事務所は選べず、実務上は株式会社または合同会社の設立が中心となります。信用力・資金調達を重視するなら株式会社、コストと機動力を重視するなら合同会社、という選び方が基本です。
重要:会社設立費用だけで判断しないでください
2025年(令和7年)10月16日施行の改正により、経営管理ビザの許可基準は大幅に厳格化され、資本金等3,000万円以上・常勤職員1名以上の雇用・日本語能力要件・事業計画書の専門家確認などが求められるようになりました(2028年10月までの経過措置あり)。
そのため、実際の資本金は法定の最低額より大きくなり、登録免許税も資本金×0.7%で増えます(例:資本金3,000万円なら登録免許税は約21万円)。会社形態の選択は、この在留資格側の要件と一体で設計することが不可欠です。詳しくは経営管理ビザ改正Q&Aをご覧ください。
当事務所は、外国人の会社設立と経営管理ビザ申請を切り離さず、入管法と会社法の両面から一体で設計することを最重視しています。「会社は作れたのにビザが取れない」という事態を防ぐため、最初の設計段階からご相談ください。日本人行政書士が中国語で直接ご対応します。
会社設立と経営管理ビザのご相談は無料です
どの形態が最適かの診断から、設立・ビザ取得まで一貫してサポートします。
オンライン(Zoom等)・中国語対応で、海外からのご相談も承ります。
※本記事の費用・要件は2025〜2026年時点の情報です。定款認証手数料(令和6年12月改定)・登録免許税・経営管理ビザの基準(令和7年10月16日改正)などは改正される場合があり、最新の内容は公証役場・法務局・出入国在留管理庁等の公式情報および当事務所へご確認ください。専門家報酬は別途申し受けます。


